
著者プロフィール
田代尚機
1984年大和証券入社。その後、大和総研に出向。1994年より大和総研の代表として北京に駐在、以後中国株アナリストとして各メディアで活躍する。 2003年内藤証券入社、中国部長に就任。現在、中国経済アナリストとして中国市場を分析している。

しかし、彼らが言っているのは目先のことだけである。少なくとも取材先のIR担当者たちはそれ以上のことにはあまり関心がないようだ。視点変えてみよう。オリンピックを開催することによって中国そのものが大きく変わるのではないか。数十年後に現在を振り返ったとき、オリンピックはやはり特別な出来事として位置付けられるのではないか。そうした観点でオリンピックについて考えてみよう。
オリンピックは、中国がより国際協調を進めていくための“試練の場”である。米国をはじめとした先進国とは、貿易、為替制度、国内市場の開放など経済面で大きな摩擦を抱えている。一方政治面では、人権、民主化、台湾独立などで深刻な対立を抱えている。オリンピック開催を通じて、中国は、国際化、市場化、自由化、民主化を進めざるを得ない。特殊な共産国から身近な市場経済国へと脱皮しなければならない。
しかし、中国は世界も変える。中国にとって自分たちの利益を最大化することがすべてである。その条件が満たされる範囲での市場経済化だ。そうした中国にあわせ、他国も経済システムを作り変えなければならない。1978年から始まった改革開放政策。対外開放、市場経済の導入、WTO加盟、そしてオリンピック。為替の自由化、金融の自由化を経て、中国独自の市場経済が完成する。
後世の人々が現在を振り返ってオリンピック開催を評価したならば、それは、“国際化、市場化、自由化、民主化の加速”なのではなかろうか。しかし、ひょっとしたらこれらもオリンピックとは無関係なのかもしれない。オリンピックが開催されようが、されまいが中国は急速に超大国へと成長する。オリンピック開催は時期的なメルクマール(目印)でしかないかもしれない。
このコラムのメインテーマは、“オリンピック後の中国はどうなるのか”である。オリンピック後の経済、株式市場、国際政治はどう変わるのか。オリンピック後に、成長する産業、衰退する産業、有望な銘柄は何か。冷静に中国を分析してみたい。闇雲にバブルを怖がっていてもしかたがない。今や中国株を含まないポートフォリオなど考えられない時代なのだから。
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