
著者プロフィール
田代尚機
1984年大和証券入社。その後、大和総研に出向。1994年より大和総研の代表として北京に駐在、以後中国株アナリストとして各メディアで活躍する。 2003年内藤証券入社、中国部長に就任。現在、中国経済アナリストとして中国市場を分析している。

バブル崩壊で日本が失ったものは大きい。株式市場低迷により直接金融の機能は麻痺し、不良債権の大量発生とその処理のために間接金融は機能を著しく低下させた。設備の過剰、雇用の過剰、債務の過剰。3つの過剰を解消するために、企業はリストラを進め、事業を再編し、財務体質を強化した。日本が萎縮し、内向的になる中で、世界はより自由に、よりオープンになっていった。その変化をうまく捉えたのが中国である。
米中間の二カ国間協議がまとまり、実質的にWTO加盟が確実となった1999年あたりがターニングポイントであろう。米国が、中国を、自由貿易を通じ共存共栄を図る“仲間”とみなしたことで、世界各国も一気に同調した。中国から物を買ったり売ったりするだけではない。資金を投じて自分たちの欲しい物を作らせる者、巨大な市場を目指して自ら進出する者などが入り乱れ、中国は世界で最もホットな市場と化した。
GDP成長率と貿易依存度((輸出+輸入)/GDP)の関係(図参照)を見ると、2001年を境に貿易依存度は上昇、GDP成長率も加速しており、貿易の拡大が経済を牽引している様子がよくわかる。ちなみに2000年時点では中国の世界貿易シェアは3.9%、輸出は7位、輸入は8位。それが2006年時点では、貿易シェアは7.3%、輸出、輸入ともにアメリカ、ドイツに次ぎ、3位となっている。中国は既に貿易大国である。
貿易急拡大の要因は、WTO加盟だけではない。インターネットの発達を中心とした情報通信における驚異的な技術革新が大きな役割を果たしている。たとえばメールがない世界を想像してほしい。どうやって意見交換するのか、どうやって精巧な図面を送るのか。もちろん電話やファックスを使ってもできるが、コストや使い勝手が圧倒的に違う。インターネットがビジネスのグローバル化を引き起こしたともいえる。
一方、生産現場において、特に、パソコン、通信機器、家電製品などの製品を中心として、モジュール化といった技法が広まった。部品をできるだけ標準化し、生産工程をシンプルにする。それぞれの部品をいくつかの“塊”にして、最終工程でそれらを一気に組み立てる。この方法によって、生産が効率化したばかりでなく、分業化が飛躍的に進むことになった。
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