
著者プロフィール
田代尚機
1984年大和証券入社。その後、大和総研に出向。1994年より大和総研の代表として北京に駐在、以後中国株アナリストとして各メディアで活躍する。 2003年内藤証券入社、中国部長に就任。現在、中国経済アナリストとして中国市場を分析している。

前回紹介したパソコン生産について、もう少し話を続けたい。一連の生産で発生する貿易取引は何だろうか。マーケティング、企画などは、アメリカで行なわれるのだが、その成果を中国側に引き渡す際、その対価が輸出として計上されるわけではない。販売についても同様、貿易とは関係ない。貿易取引として現れるのは中国で作られた製品をアメリカに輸送する過程だけ。その仕入金額分がアメリカで輸入として計上される。
ギャップの服、ナイキの靴、トイザラスのおもちゃだって同じ。食料品、家電製品、・・・。身の回りにある大半の商品が中国で作られている。アメリカの消費者は少しでも安い商品を求める。できるだけ多くの利益を稼ごうとするアメリカ企業がそうしたニーズに応える。こうした関係において、アメリカでは中国からの輸入が構造的に増えており、この繋がりは非常に強固なものとなっている。
アメリカでは、貿易赤字は、財政赤字とともに“双子の赤字”と称され、非常に深刻な問題となっている。アメリカの貿易赤字に占める中国の割合は今や3割を超え、日本の3倍でもちろん国別第一位。しかも毎年赤字額は増えるばかり。全体の貿易不均衡を正すためには、まず、最大規模である中国との貿易不均衡を正すことが有効である。アメリカ政府がそう考えるのも無理はない。
中国からの輸入を減らすにはどうしたらよいのであろうか。アメリカ企業に中国からの輸入をやめさせればいいのだが、国内産業を守ることを目的とした保護貿易、中国を排除した形でのブロック貿易などの体制に移行できる訳がない。うなぎ、ドッグフード、おもちゃ、タイヤ・・・。中国製品の安全性を厳しくチェックして、正当な理由のあるものをピンポイントで排除するのが精一杯である。
輸入を減らすことが困難ならば、中国への輸出を増やせばいい。しかし、それは、中国政府、企業が決めること。中国政府は、未熟な中国企業を守りたいと考えている。高付加価値の輸入製品が中国市場にあふれてしまえば、大事な国内企業の成長は阻害される。アメリカは、こうした中国の保護主義を厳しく非難、市場開放を迫るが、中国の巧みな外交術にあって、なかなかうまくいかない。
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