田代尚機のweb連載

帰ってきたレッドセンセーション
−オリンピック後の中国を読み解く−

石田 高聖

著者プロフィール

田代尚機

1984年大和証券入社。その後、大和総研に出向。1994年より大和総研の代表として北京に駐在、以後中国株アナリストとして各メディアで活躍する。 2003年内藤証券入社、中国部長に就任。現在、中国経済アナリストとして中国市場を分析している。

第13回 過剰流動性はどうして生じるのか(前半)

国際収支の動向

 第5、6回で中国経済はバブルではないという話をした。輸出、投資が経済を大きく牽引している。輸出が伸びるのは中国の輸出産業が高い国際競争力を持つからだ。投資が伸びるのは中国の各産業が成長過程にあり必要な投資案件が豊富に存在するからである。ただ、そうはいっても、資産価格や、物価の動きを見る限り、経済は過熱気味。政府の努力で経済がバブル化してしまうのをかろうじて防いでいるような状態である。

 経済過熱をもう少し具体的にいえば、設備投資の伸びが速すぎる、株や不動産などの資産価格、物価が急騰しているなど。なぜそうしたことが起こるのかといえば市中にお金が溢れているからだ。お金がたくさんあるから企業は設備投資を行うことができ、個人は土地や株、物が買える。企業も個人も、お金が簡単に得られるとその使い方が安易になってしまう。銀行だって過剰融資してしまう。だから総需要が伸びるのである。

 こうした過熱を作り出している最大の要因は外貨の過剰な流入であろう。2006年、中国の貿易黒字は2,177億ドル。一方直接投資は603億元の入超。この年は外国債券投資が676億元あったものの、それでも外貨準備は2,475億元増加した。外貨準備の積み上がりは今年になって更に加速、2007年9月末時点で年初から3,673億ドル増加、総額1兆4,336億元に達している。もちろん世界一の規模である。

 黒字体質になる理由はいくつかある。ひとつは、金融制度が十分に開放されていないこと。海外への金融投資は厳しく制限されており、外貨の流出するルートがない。アジア通貨危機の教訓から、中国政府は金融市場を無防備に自由化することが如何に危険なことかをよく理解している。だから、政府はコントロールできる範囲で、少しずつしか自由化しないのだ。

 もうひとつの理由は人民元が非常に割安であること。安くて豊富な労働力。立地条件の良い土地。政府の積極的な企業誘致。産業集積の進展。WTO加盟により共産党一党独裁体制に対する不安感が消失したこと・・・。外国企業の進出を梃子に世界最強の輸出産業を作り上げた中国であるが、その最大の要因は人民元を非常に割安に据え置いたことであろう。

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