
著者プロフィール
田代尚機
1984年大和証券入社。その後、大和総研に出向。1994年より大和総研の代表として北京に駐在、以後中国株アナリストとして各メディアで活躍する。 2003年内藤証券入社、中国部長に就任。現在、中国経済アナリストとして中国市場を分析している。
物価上昇について、実は心配な点がいくつかある。まず一つ目は、世界的な原油価格の上昇である。実物価格は先物価格に引き上げるような格好で上昇している。中国の原油輸入依存度は5割弱。原油を原材料とするガソリンなどの燃料費、エチレンなどの化学製品類の生産コストが上昇しており、物価上昇圧力は高まっている。
ガソリンについては話がやや複雑である。政府が価格をコントロールしており、メーカーはコストアップを価格に転嫁できない。各社は赤字操業を嫌い、生産量を削減したことから、昨年は、一時的に品不足に陥ってしまった。ただし、現在は、政府が価格を引き上げたことによって、需給アンバランスは解消に向かっている。

二つ目は、世界的な穀物価格の上昇である。穀物価格の上昇は、それをえさとして与えることから、家畜や乳製品の生産コスト上昇につながる。豚肉は疫病によるロスが大きい。牛肉、鶏肉や牛乳などの価格も上がっているが、生産者が価格決定力を持っているわけではない。牛乳では大手メーカーが、それ以外の農産物では、その大部分について、政府関連業者が価格決定力を持っている。生産者はコストアップを転嫁できず、利益は圧迫されている。政府が価格を引き上げるなどの救済を行えば、最終製品価格は更に上昇することになる。
三つ目は、石炭価格の上昇である。中国の石炭埋蔵量は豊富である。ネックは掘り出す能力、輸送する能力が需要増に追いつかないことである。環境汚染、安全面などに対する対策も必要である。石炭会社がある程度利益を上げられないと設備投資もすすまない。政府の支持もあり、石炭価格は長期に渡り、じわじわと上昇しそうである。
発電には石炭を燃料として使用するケースが多いことから、電力価格にも上昇圧力がかかる。電力価格の決定権は地方政府にあるが、政府は電力産業も重点的に発展させたいと考えている。やはり、電力価格も上げざるを得ないであろう。そのほか、金などの非鉄金属、鉄鉱石などの価格も上昇しており、その動向が気になる。社会主義であれば、従業員の給与を含め、コントロールできることは多い。しかし、コストアップは最終的にどこかが負担しなければならない。それは社会主義でも変わらない。
インフレがコストプアップ(プッシュ)による一過性のものに留まっていればまだ良性である。しかし、これが需要に供給が追いつかない形でインフレが進行したり、消費者のインフレ期待がどんどん高まる形でスパイラルにインフレが進行したりするようになれば、危険な状態だ。現在良性だからといってほうっておいたら悪性に転換して取り返しがつかなくなってしまうこともある。やはり、今のうちに治療した方がいいのであろう。
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