
著者プロフィール
田代尚機
1984年大和証券入社。その後、大和総研に出向。1994年より大和総研の代表として北京に駐在、以後中国株アナリストとして各メディアで活躍する。 2003年内藤証券入社、中国部長に就任。現在、中国経済アナリストとして中国市場を分析している。
3月14日に起きた暴動についてはわからない部分が多い。いろいろな映像を見たが、チベット人が破壊活動をするところ、公安が座り込むチベット人を引き剥がそうとしているところなど、断片的なものばかり。ネットの書き込みなどを含め、いろいろ調べてみると、どうやら10日に始まった僧侶によるデモを公安が行き過ぎたやり方で阻止し、その後両者の対立が深まっていった結果、14日の騒乱に至ったようである。

西側諸国では“チベット人が共産党による圧制に耐えかねて、自由を求めて決起したのだ”という論調が多いが果たしてどうか。ちなみに共産党は、「ダライ・ラマ一味がオリンピックを妨害するために行った」としている。また、併合以前のチベットは欧米などの支持のもとで成り立っていた。その後のチベット亡命政府についても、米国CIAが金銭的に支えていたという事実がある。今回の騒乱も、“背後に欧米の機関による何らかの策動がない”と即座に断定できない。

今も欧米の基準からみれば、共産党のやり方は人権侵害に当たる部分が多いであろう。ただし、その人権侵害はチベット人に限ったことではなく、中国人すべてに対してである。共産党には共産党としての正義があり、原理原則がある。それが欧米の基準に合わないのである。“欧米が正しくて共産党が間違っている”、あるいは“中国の民主化が遅れている”といったような単純なことではない。今回の騒乱は“文明の衝突”である。

今後の共産党の対応ははっきりしている。原理原則を曲げることなく、この種の事件には断固とした対応を取り続けるであろう。オリンピックよりも国家の安定のほうが明らかに重要である。騒乱により、直接投資、貿易については短期的な影響はあるかもしれない。しかし、欧米も決して“単一”ではない。長期的には中国抜きに“商売”はできない。
国内の反応は極めて小さい。本土株式市場では、騒乱直後の2営業日のみ、チベット関連8銘柄の株価が大きく下落したにとどまる。経済はもちろん、株式市場においても、大きな影響が出ると考える研究者、市場関係者は皆無である。今後、オリンピックボイコット運動が広がり、H株、レッドチップ株が大きく下落するようなことがあれば、そのときは絶好の買い場となろう。いまのところ、残念ながら、その気配はまったくないが・・・。
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