田代尚機のweb連載

帰ってきたレッドセンセーション
−オリンピック後の中国を読み解く−

田代尚機

著者プロフィール

田代尚機

1984年大和証券入社。その後、大和総研に出向。1994年より大和総研の代表として北京に駐在、以後中国株アナリストとして各メディアで活躍する。 2003年内藤証券入社、中国部長に就任。現在、中国経済アナリストとして中国市場を分析している。

第19回 中国沈没のリスクは?(前半)

 どうもここ数年、中国に対するネガティブな意見が多い。この14〜15年、中国ビジネスに関わってきたが、その間ポジティブな意見が大勢を占めた時期は短い。1994年からの数年、2000年からの数年ぐらいではないか。最近出たいくつかの新書の中から、中国リスクとして指摘された点を簡単に整理してみよう。

 まず、共産党に関する指摘が多い。党幹部による腐敗、政治闘争による経済社会の不安定化、地域格差や貧富の拡大など経済運営の失敗。民衆が共産党に不満を持ち、不公平の是正、自由民主を求めて内乱が起こるといった見方である。

 経済に関しては、バブル化とその崩壊懸念が指摘される。過度に輸出振興を推し進めたために、中国は世界各国と激しい貿易摩擦を引き起こしている。一方で、国内産業(市場)、特に金融産業(市場)の開放が遅れ、人民元高期待が高まり、世界中から資金が流入、深刻な過剰流動性が発生している。

 自由化の程度が低いからなのか、あるいは管理規制が不足しているのか。不動産市場、株式市場などで価格が急騰している。設備投資も同様。市場メカニズムがうまく働かずに、不要不急の投資、重複投資が深刻である。市場経済化が遅すぎるといった意見、市場経済化が早すぎるといった意見が交錯している。

北京市内の下町でもオリンピックに関する共産党の広告が…

 そのほか、法治国家ではないとか、食糧問題、資源問題が深刻なことから成長に限界があるとか、今後米国は中国に対して非常に厳しくあたるとか、いろいろな点が中国リスクとして指摘されている。筆者の感想を一言で言えば、“過剰流動性の問題を除けば、すべてここ14〜15年間指摘され続けたことで、目新しいことは何もない”である。

 むしろ知りたいのは、こうしたリスクがなぜこの14〜15年もの間、顕在化しなかったのか。もっとはっきりいえば、なぜ民衆は暴動を起こさないのか。なぜ共産党は崩壊しないのか。なぜ、バブル経済は崩壊しないのか・・・。その答えを整理したほうがいいのではないか。

 断片的なリスクをいくら集めても全体像は見えてこない。そもそも欠点のない社会など存在しない。問題はその欠点が制御可能かどうかである。盲目的な自由化ではなく、共産党が社会や経済を適切にコントロールできるかどうかが肝要だと思う。

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