
著者プロフィール
田代尚機
1984年大和証券入社。その後、大和総研に出向。1994年より大和総研の代表として北京に駐在、以後中国株アナリストとして各メディアで活躍する。 2003年内藤証券入社、中国部長に就任。現在、中国経済アナリストとして中国市場を分析している。
あいかわらず、オリンピック後に中国株式市場は調整するという意見は多い。ただし、その理由には2種類がある。ひとつは、“オリンピック後に経済が落ち込み、その結果株価も下落する”といった考え方。もうひとつは、“オリンピック前に株価が支えられるため、オリンピック後には、その支えがなくなって下落する”といった考え方である。
前者については、このコラムを通じて“経済とオリンピックとはほぼ無関係”と言い続けてきた。一方、後者についてはどうだろうか。現在すでに政府が株価を支えている状態だが、今後も株価は支え続けられるであろう。しかし、その支えがなくなるかどうかはオリンピックとは無関係である。

“オリンピック前に株価が下落するのは政府のメンツにかかわるから株価を支えるのだ”といった意見もあるが、政府は経済運営よりもメンツを優先させるほど愚かではない。ただし、株価が下落して喜ぶ人はほとんどいない。今年は春先に起きた雪害、5月に起きた四川大地震など、暗い出来事が多い。ここで株安がさらに追い討ちをかけるようであれば、人心の気持ちはさらに暗くなる。彼らのフラストレーションは大きく膨らみ、政治への不満が一気に高まるといったリスクはあるかもしれない。
現在の株価は、オリンピックがあろうとなかろうと、支えなければならない水準まで下がっている。上海総合指数の史上最高値は10月16日に場中で記録した6,124ポイント。それが、約半年後の4月22日には、場中で3,000ポイントを割る水準まで下落している。
その時点で、非流通株流通化を制限する政策、印紙税引き上げなど株価救済策が発動され、いったん株価はリバウンドした。その後5月12日に四川大地震が発生したものの、機関投資家への指導といった形で政府は大口の売りをなんとか押さえ込み、株価を支えてきた。株価がこれ以上下がることを政府は決して望んではいない。
ただし、政策には重要性に関しての序列がある。現在の政府が最重要視している政策はインフレ、過剰流動性の抑制。金融政策が株価対策に優先する状態だ。今後、仮に米国経済の悪化、米国株の下落、先物市場でのバブル助長、インフレの進行、ドル下落・・・といった最悪の事態が発生したならば、中国では過剰流動性が高まり、インフレが進行し、さらに金融を引き締めなければならない。そうすれば株価は3,000ポイント割って下落するかもしれない。
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