田代尚機のweb連載

帰ってきたレッドセンセーション
−オリンピック後の中国を読み解く−

田代尚機

著者プロフィール

田代尚機

1984年大和証券入社。その後、大和総研に出向。1994年より大和総研の代表として北京に駐在、以後中国株アナリストとして各メディアで活躍する。 2003年内藤証券入社、中国部長に就任。現在、中国経済アナリストとして中国市場を分析している。

第24回 歴史は何を物語るのか(本土編)?(後半)

本土株主要指数の動向

 もう一度、グラフに戻っていただきたい。

 もし、株価がファンダメンタルズに基づいて動くとすれば、株価は名目GDPの動きに合わせて動くはずである。上海総合指数をみると、1997年から2001年あたりにかけては、ボラティリティーは高いが、何となくGDPの動きに似てなくもない。しかしその後はどうであろうか。

 2001年夏以降、四年間の下げ相場は名目GDPの動きとはまったく逆である。ファンダメンタルズを正確に評価するためには、企業業績を見る必要がある。この間、名目GDPの動きと企業業績の動きはまったく違っていたのだろうか。事実はそうではない。この間企業業績は好調を続けていた。

 また、2005年夏から2007年秋にかけての急騰局面は、名目GDPとの乖離を一気に埋めるような動きである。しかし、その後の急落は、名目GDPの動きとは無関係である。この間のGDPは表に現されていないが、10%前後の成長をするはずである。傾きは若干緩やかになるものの、いうまでもなく、プラスである。

 2001年夏以降、上海総合指数が下落した理由は何だったのだろうか。もっとも大きな理由は、非流通株の流通化改革を行うと宣言したことであろう。発行済み株式総数の3分の2が非流通株である。これが流通し始めたら需給悪化による株価大暴落は避けられない。

 その後、この問題は一旦凍結されたり、突然議論が再開されたり、迷走した。実際の改革が始まったのは、2005年6月からだ。底入れはその直後である。

 また、2001年夏以降の下げ相場では、政府は資本市場の粛清を続けた。具体的には、証券会社、投資家、上場企業の違法行為を徹底的に追及した。2003年からは、適格海外機関投資家制度(QFII)による外国人投資家のA株投資が解禁されたものの、時価総額全体から見れば、投資額は極めて少なく、相場全体を引き上げる材料とはならなかった。

 一方、2005年6月以降の急騰局面では、非流通株流通化の進展が最大の要因となった。内容が既存投資家に有利なものであったこと、事実上、全株流通するのを3年間先延ばししたことなどを投資家が好感したのである。

四川大地震の様子を示す政府の広告

 2007年秋以降の下落は、政府の株価抑制策による。株価抑制を目的としたというよりも、過剰流動性を抑えることを目的として行われた感があるが、結果として、金融引き締め政策は株価抑制に良く効いた。そのほか、印紙税引き上げ、株式ファンド募集の制限、そして要人による株式バブル発言など。政府は明確に株価を下げようとした。


 本土株の買い手は誰なのか。売買代金ベースで5割は個人投資家、4割弱が背後に個人投資家のいるファンドを運用する金融機関である。このファンド運用会社の運用する資金の総額は個人投資家の動向によって大きく左右される。


 これまでの株価の振幅は個人投資家のマインドを反映している。先進国では、経済・金融の動向、企業業績などによって、マインドがおおよそ形成されている。しかし中国はそうした傾向が小さい。


 中国の投資家マインドに最も強く影響を与えるのは政府政策である。政府政策によってファンダメンタルズが変化し、需給関係が変化する。そういう言い方もできるかもしれない。


 個人投資家は政府の政策をどのように判断するのか。将来の株価の動向を知りたいならば、その点に分析の重点を置くべきである。中国人心理を徹底的に調べることだ。暇があったら行動心理学の勉強もしたいと思っている。


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