
著者プロフィール
田代尚機
1984年大和証券入社。その後、大和総研に出向。1994年より大和総研の代表として北京に駐在、以後中国株アナリストとして各メディアで活躍する。 2003年内藤証券入社、中国部長に就任。現在、中国経済アナリストとして中国市場を分析している。
前編では欧米から見た香港市場について書いた。もちろん欧米の金融機関、機関投資家だけの力で現在の香港市場ができあがったわけではない。中国政府による国有企業改革、国家発展政策、産業政策が、欧米の金融機関、機関投資家の求めるものと一致したからこそ、今の香港市場が存在する。
中国は現在でも社会主義国家である。経済の中心にある計画経済を少しずつ市場経済に変えていく作業が延々と続いている。その市場化の中核をなすのがここに上げた国有企業改革であり、国家発展政策、産業政策である。
国有企業の問題点ははっきりしている。収益を最大化させるインセンティブに乏しいこと、競争がないため生産性が向上しないこと、・・・。企業の経営力を高めるためには、国有企業を上場させ、コーポレートガバナンスを徹底させるのが良い。また、改革は産業ごとに行い、国が大きな発展戦略を描くものの、その範囲でそれぞれ競争する体制を作ることが望ましい。
政府は、国務院幹部たちの指導を仰ぎながら、各部門が密接に情報交換しながら、マクロの政策からミクロの政策まで大きなデザインを描いている。その大きなデザインにあわせて、産業ごとに国有企業が市場経済化されていく。
前回示したように、これまでいろいろなセクターの市場経済化改革が行われ、多数の上場企業が生まれてきた。H株の歴史はまさに中国の諸改革の歴史でもある。おおよそすべての産業で一通り市場化は済んでいるが、各産業によって上場企業の厚みに差がある。今後はその差を埋めるような作業が続くであろう。
また、銀行の一部、インフラ建設のかなりの部分で改革が遅れている。今後長期にわたり、上場を通じた改革は必要である。そのためにはA株市場だけでは不十分。欧米市場の窓口としての香港市場は非常に重要である。中国は、欧米の金融機関、機関投資家の持つ膨大な資金力、企業改革の能力、優れた企業経営能力などを是非とも取り入れたいのである。

最後になってしまったが、株価を見ていただきたい。H株指数は、2002年10月が底、2007年10月が天井となり、5年で10倍に跳ね上がった。その後はごらんの通り。7月末時点で、天井から約4割下げている。この間の株価の動きには明らかに行き過ぎがある。株価変動の理由についてはいろいろなレポートで述べているのでそちらを見ていただきたい。
短期的な株価の動きなど、どうでもよい。最も重要なことは、欧米諸国にとっても、中国にとっても、香港市場は非常に利用価値が大きいということだ。そのことだけは忘れるべきではない。金の卵を産む鶏をむざむざ見殺しにしてしまうほど、かれらは淡白ではない。
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